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会社概要

店名さなえ窯
代表者代表取締役社長 伊藤 嘉基
事業所〒509-5202 岐阜県土岐市下石町1597-1
事業内容陶磁器販売
関連会社有限会社 一山製陶所

アクセス

お車をご利用の場合東海環状自動車道から/土岐南多治見I.C.で降り左折。「下石町西山口」交差点を左折して「東山口南」信号を右折。
県道66号線に入り「下石」交差点を左折して約600m。
公共交通機関を
ご利用の場合
JR土岐市駅 下車 東鉄バス「下石貢駅」降車 徒歩3分
セラ・キュート 開発までのストーリー

開発のきっかけ

開発のきっかけ
 当社は、私の曽祖父にあたる伊藤鯉九朗が1907年に絵具屋を始め、1957年に私の祖父が有限会社一山製陶所を設立しました。骨壺を初め、私の父である伊藤啓二(現会長)が、後に焼酎サーバーやビールジョッキ等の商品を製造し、ほぼ100%地元の産地問屋に卸しています。
開発のきっかけ  セラ・キュートを開発するきっかけとなったのは当時ブームとなった「タジン鍋」という商品です。当社も「タジン鍋」を製造し産地問屋に卸していました。モロッコの郷土料理で当時は新聞に取り上げられ、料理本が販売されるなど話題となっていました。いままで料理の経験もなかった私でしたがこれだけ話題になっているものを食べてみたいと思い料理本片手に作ってみました。中の食材が蒸気によって蒸され遠赤外線効果でふっくらと仕上がり大変美味しかったのを覚えています。「タジン鍋を進化させた、もっと密閉性のある商品が作れないものか?」そんな事を考えたのがきっかけとなりました。

度重なる苦悩

度重なる苦悩
 「安価でできる商品ではなくもっと付加価値の高い商品を開発してみよう」
タジン鍋は安価な輸入品におされ、売り上げが減っている現実を見てこう思ったのです。食材から出る水分を逃がさないというのが、タジン鍋の特徴です。まずは本体とフタの隙間をなくす為にガムテープでくっつけたり、粘土を埋めたり実験を行いましたがどれも上手く行かずしかも非現実的でした。
 どうやったら精度が出るのだろうか?途方にくれている私に手を差し伸べてくれる出会いがありました。それはセラミックを加工するという技術です。主に工業用の部品を生産し加工することによって何ミリも狂いもない部品を提供してるのです。当時、こういった事にはまったく疎かった私だったので製品を見せてもらったとき大変感動しました。この加工の技術とコラボレーションすれば「究極な鍋」が作れるのではないかと安易に考え、胸を膨らませましたが実際簡単にはいきませんでした。
 まずは「歪み」です。1200度以上の高温で焼かれる粘土にはどうしても「歪み」が出てきてしまい、今の生産方法では加工できないと言われてしまいました。そう言われた私は、いままでの概念を捨てて一から考えることにしました。  まずは粘土から。耐化度の高く収縮が少ない粘土を選び、一番歪みが出るといわれる乾燥も強制乾燥させず自然乾燥し、さらにガラス板を用意し乾燥して収縮しても最小限の歪みで抑えられるよう努力しました。  次は釉薬の選定です。6種類の耐熱黒釉薬を用意し新しい耐熱土との相性を確かめました。熱伝導率を少しでも向上させるために、温度も10度ずつ上げて行き、土が磁器化しないような温度領域を模索しました。自社では空焚きを繰り返し割れのチェックをし、公的機関では耐熱衝撃強度の試験を繰り返し依頼しました。
度重なる苦悩  また、一番大変だったのが小さな工場で開発部なども存在しませんので、実験は全て時間外か日曜日に実施し、温度も普段焼成している温度とは違うためサンプル品を焼くためにだけに温度を上げたり下げたりしなければならずトンネル窯を使用している当社では当時かなりのガス代がかかったのを覚えております。小さな電気窯を借りてやってみましたが、ヒートカーブの違いや冷却時間、熱量の違い等であまり良いデータがとれなく自社の窯でやるしかありませんでした。

試作品から、新たなる苦悩

試作品から、新たなる苦悩
 デザインに関しては、デザイン室もなければ企画室もないので、当然デザイナーもいるはずもなく自分で一から考え、「いままでの土鍋のイメージを払拭して、シンプルな形状にしよう」と思い、まずは取手を無くそうと思いました。ただ、そうしますと当然ながら持ちにくいものになってしまうわけですが、それを解消させるためにフチの裏側に溝を作ることで、持つときに手がひっかかるようにしました。それにより持ちにくいというハードルがクリアでき、自分が考えていたシンプルさを表現することが出来ました。こうしてようやく形になり、ニューセラミックの分野と融合して第一号の試作品が出来上がりました。
 まず初めに挑戦したのはカレーでした。なんと水、油を一切使用せず、陶磁器でカレーが完成したのです。家族や友人に早速食べてもらいましたが、食材だけのうまみ成分で出来ているので本当に美味しく評判も上々。極めつけは小学生の姪っ子に「このカレーいつもと違って甘くて美味しいね」屈託のない笑顔で答えてくれたときは本当に嬉しかったです。さぁ、これでいけると思っていましたが、また新たな問題が発生しました。それは臭いと汚れです。土鍋は焦げ付きやすく、吸水しやすいというデメリットがあり、一日置いた鍋はカレーの臭いと汚れがついておりなかなか落ちませんでした。勿論臭いや汚れの対処方法はありますが、次世代型の鍋を考える上でどうしてもこの問題を解決しなければならないと思ったのです。
 そこからまた苦労の日々が続きました。最初はフライパンなどに使用されているテフロン加工に挑戦しましたが、使い方を間違えると直ちに剥がれてしまったり、焼き付ける温度が低すぎて自社でやることが出来ず、なるべく自社生産をしたいと思っていましたのでテフロン加工は断念しました。ただ、どうしても解決したいという一心で、色々考えアドバイスを頂いた結果、鉄にガラスコーティングをして出来る「ホーローコーティング」に挑戦しようと考えたのです。しかし、陶磁器に二次加工をしてガラスコーティングをしたものが見当たらなく本当にできるものなのか半信半疑でした。ただ、自社の窯で実験ができるというわずかな望みにかけようと思ったのです。何故、難しいかといいますと陶器というのは窯の中で膨張したり収縮したりして商品が完成するのですが、耐熱陶器はその膨張や収縮が小さいためそれに合ったガラス(原料)が見当たらないのです。試験機関に何とかできないか相談し10種類以上のガラスを試作しました。
試作品から、新たなる苦悩  吹く濃度や窯の温度も一から探り、失敗続きで何度も諦めようとしましたが、お客様に良いものを提供したい一心で実験を重ねました。一次焼成とは違う温度でやらなくてはいけないですが、やっとの思いでガラスコーティングが完成したのです。試作してもらった方の感想も上々で一般の土鍋よりも臭いが付き難く、汚れも落としやすくなりました。

「次世代型セラミック鍋」=「セラ・キュート」の誕生

「次世代型セラミック鍋」=「セラ・キュート」の誕生
 こうして二年の歳月をかけて完成したのが「セラ・キュート」です。 密閉性、圧力効果それに遠赤外線効果(土鍋力)をもつこの鍋は「次世代型セラミック鍋」として誕生させることが出来たのです。いままで通り地元の産地問屋を通すと上代価格で高いものとなってしまうので直販をしますが、数量が出来ないため今現在はネットショップのみの販売となります。全てはお客様が満足いく商品をテーマにここまで粘り強くものづくりをして参りました。当社は量産体制をとっているので逆行していますが、付加価値の高い商品を目指して作り上げたもので、安価な輸入商品の台頭や異業種の技術革新の競争に負け、疲弊しきっているこの美濃焼業界を何とかしたいという想いです。
 こういった想いで作り上げたこの「セラ・キュート」を一人でも多くご使用して頂き、次世代型セラミック鍋としてご愛用して頂けたら最愛です。

開発者プロフィール

代表取締役社長 伊藤嘉基

経歴
2001年3月中央大学法学部法律学科 卒業
2001年4月トステム株式会社 現)株式会社LIXIL 入社
2003年4月岐阜県多治見市陶磁器意匠研究所 入所
2003年4月有限会社一山製陶所(さなえ窯) 入社
2005年8月専務取締役 就任
2015年10月代表取締役社長 就任

「次世代型セラミック鍋」=「セラ・キュート」の誕生
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